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FTIRの基礎

FTIRの基礎(4) 各種測定法について

FTIRには、様々な測定方法があります。以下にその分類と特徴をまとめます。

各種測定法(透過法)

KBr錠剤法
粉末、または粉砕して微粉末にできる試料が対象です。ただし、KBrの吸湿の影響により、OH基の吸収帯ではスペクトルの評価は難しくなります。水を含む、吸湿性が高い、高濃度のカーボンや顔料が含まれる、結晶構造が壊れやすい、赤外線を透過しにくい試料は向いていません。塩化物、塩酸塩は、KBrのBrとClがハロゲン交換してしまうので、KClで錠剤化するのが一般的です。

KBr錠剤法
図1 KBr錠剤法
ヌジョール法
粉末、または粉末にできる試料を流動パラフィン(ヌジョール)に練りこませてペースト状にし、窓板に塗布する方法です。もともとは、KBr法錠剤法ではサンプリング中に吸湿してしまう試料(果糖などの糖類)や溶媒に溶解しない試料(無機物)に対して使用していました。現在は、日本薬局方で赤外スペクトルの確認試験でヌジョール法が指定されている試薬やN2ガスパージ下での遠赤外測定で用います。流動パラフィンの吸収が出るため、C-H基(3000~2800、1500~1300cm−1)の領域は評価できません。

ヌジョール法
図2 ヌジョール法
KBrプレート法
KBrを結晶のまま用いる手法です。粉末状の試料をKBrのプレートに挟んで測定します。粉砕の手間がないので、簡便にサンプリングできます。KBr法のサンプリングを簡便化したい場合、または吸湿性が高い試料を測定したい場合に有効です。粒径の大きい試料は散乱の影響を受けやすく、吸収が実際より弱く観測されることがあります。水を含む試料は測定できません。

KBrプレート法
図3 KBrプレート法
薄膜法
薄膜化できる試料が対象です。厚みは10µm以下にする必要があります。薄膜化には、延伸する、熱プレスする、切削する等様々な方法があります。溶媒に溶ける試料であれば溶媒を溶かし、その溶液を赤外透過材(KBrプレート)に塗布した後、溶媒を揮発させて薄膜化する手法が簡便です。

薄膜法
図4 薄膜法
液膜法
不揮発性で粘度の高い液体が対象です。定性分析に向いています。2枚の窓板に液体を挟んで組み立てセル内に保持します。ピークの強度に応じて、スペーサーで光路長を調整する必要があります。水を含む試料は窓板にKBrは使用できません。

溶液法
揮発性溶液そのものを測定する場合や、溶液中に溶解している微量添加物の濃度を分析する場合に用います。溶媒が目的成分の吸収を妨害しないことを確認する必要があります。

ガス測定
ガスの濃度に応じて、セル長を調整します。ガスはシャープなピークを持つため、必要に応じて高分解測定が求められます。水蒸気、二酸化炭素を定量したい場合は、空気中に含まれている分を取り除くため、光学系を全真空、もしくはN2ガスパージします。

ガス測定
図5 ガス測定

各種測定法(反射法)

ATR法
赤外光がプリズム内で全反射する際に生じる、試料への光のもぐり込みを利用した反射測定法です。試料を挟んで、プリズムに密着させるだけで測定可能です。酸、アルカリ溶液を測定する場合は、腐食しないダイヤモンドプリズムを選択する必要があります。

ATR法
図6 ATR法
拡散反射法
粉体試料を測定すると、測定する光は試料内部で透過、散乱、反射を繰り返しながら粉体表面から出射します。この光を拡散反射光といい、検出する方法を拡散反射法といいます。試料の吸収が強い場合は、赤外透過材(KBrなど)で希釈する必要があります。定量的に扱う場合は、縦軸をKM(Kubelka-Munk)変換という計算を行うことで、濃度に比例した強度比になります。

拡散反射法
図7 拡散反射法
正反射法(正反射光)
平滑な平面を持つ試料に10°前後で光を入射し、その表面反射光(正反射光)を検出して測定する方法です。リファレンスに用いるミラーとの相対反射率を求めます。得られる反射スペクトルは、屈折率の異常分散によりピークが歪んだ状態になります。KK(Kramaers-Kronig)変換という計算を用いることで、歪んだスペクトルを元に戻し、通常の赤外吸収スペクトルと対比することができます。

正反射光の測定
図8 正反射光の測定
正反射法(透過反射光)
測定対象物が金属板上の薄膜の場合、赤外光は金属板上まで進行してから反射をするため、反射光からは薄膜の吸収スペクトルが得られます。KK変換する必要はありません。

透過反射光の測定
図9 透過反射光の測定
高感度反射(RAS)法
金属基板上のごく薄い薄膜に特定方向の偏光を照射すると、偏光の振動方向に応答する双極子モーメントのみが変動し、吸収強度が増大する現象が起こります。この現象を利用して高感度に測定する方法がRAS法です。透過法より1、2桁感度が増大します。薄膜の測定方法としては、非常に高感度です。

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