技術情報 Web基礎セミナー ORD・CDの基礎(2) 旋光度測定
ORD・CDの基礎

ORD・CDの基礎(2) 旋光度測定

旋光性とキラリティ

医薬品や食品には光学活性(キラリティ)をもつ物質が数多く存在します。図1はグリセルアルデヒドのL体、D体で、自然界では通常D体で存在します。キラルな医薬品や食品は、それらが働く生体がキラルな場であるために、鏡像関係にある光学異性体で異なった性質・効果を示します。例えばメントールのL体は清涼剤としてガムや歯磨き粉に使用されますが、D体は清涼感に乏しく使用されません。パーキンソン病の治療薬、ドーパはL体のみ効果があります。このように、L体とD体で作用が異なるため、使用する物質がどちらなのか、純度はどれくらいなのかを知る必要があります。キラル分子に吸収帯がある場合はCD測定が有効ですが、ORDや旋光度測定は吸収帯がない場合でも威力を発揮します。
光学異性体
図1 グリセルアルデヒドのL体、D体

キラル分子の識別

キラル分子、光学異性体(L体、D体)の識別には以下のような方法があります。
  • 結晶の晶癖による分離
  • バイオアッセイ
  • X線結晶構造解析
  • 核磁気共鳴装置(NMR)
  • 旋光度測定
  • ORD・CD測定

旋光度測定、ORD・CD測定は分光学的測定法であり、特別な前処理を必要とせず、試料を溶液状態のまま測定できる点が特徴です。

旋光度測定

旋光度(OR)測定は、ある波長における旋光角を測定するもので、濃度や光学純度(L体、D体の割合)の計測に最も簡便な方法です。日本薬局方、アメリカ薬局方、ヨーロッパ薬局方により医薬品の試験項目が定められ、測定波長、温度、濃度などの測定条件が国際標準化されています。このように対象試料の調製方法、測定条件などの分析手順(SOP)を揃えることにより、世界中で分析結果の比較が可能になります。
比旋光度の計算式
図2 比旋光度
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