技術情報 Web基礎セミナー ORD・CDの基礎(3) ORD、CD測定の特徴
ORD・CDの基礎

ORD・CDの基礎(3) ORD、CD測定の特徴

コットン効果

図1は、吸収帯波長領域におけるCD、ORD、UVスペクトルの関係を模式的に示しています。UVスペクトル領域内では、ORD曲線の異常分散とCDのピークが観測されます。この2つの現象はコットン効果呼ばれ、光学活性物質の立体配置、立体配座を知る手がかりになります。コットン効果に関する情報は、まとめると以下の3つになります。
  1. 符号(±): CD(+)、ORD(長波長側極大値)
  2. 大きさ: CDピーク値、ORDの山、谷の振幅
  3. 位置: CDピーク波長 = ORDの変曲点
CD、ORD、UVスペクトル
図1 模式的なCD、ORD、UVスペクトル
図2は、(1S)-(+)-10-Camphorsulfonic acid ammonium saltのUV、ORD、CDスペクトルです。220~350nmの波長領域でコットン効果を示しています。このように長波長側にORDの極大値を持つ場合を正のコットン効果といい、短波長側にORDの極大値を持つ場合を負のコットン効果といいます。(1S)-(+)-10-Camphorsulfonic acid ammonium saltの光学異性体である(1R)-(-)-10-Camphorsulfonic acid ammonium saltは、短波長側にORDの極大値を持ちます。ORD、CDスペクトルを測定すれば、D体、L体どちらであるかを判別することができます。
コットン効果
図2 (1S)-(+)-10-Camphorsulfonic acid ammonium saltのコットン効果

ORD・CD法の特徴

ORD、CD測定は、物質の細かな構造を解析するよりはむしろ、コンフォメーションや相互作用の変化を検出することを得意とします。また、コットン効果の解析と測定のしやすさでは、ORDよりもCD測定が優位です。
表1 ORD、CDの特徴
要素 ORD CD
コットン効果のパターン パターンが複雑 分離がよく、パターンは単純
応用のしやすさ しにくい(濁り、歪みに敏感) しやすい
定量分析 可能 可能
試料の同定 適する 難しい
測定対象 光学活性物質 不等吸収を持つ化合物
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