技術情報 Web基礎セミナー 分光蛍光光度計の基礎(2) 分光蛍光光度計でわかること
分光蛍光光度計の基礎

分光蛍光光度計の基礎(2) 分光蛍光光度計でわかること

励起スペクトルと蛍光スペクトルの特徴

励起スペクトルは検出する蛍光波長を固定し、励起光の波長を走査して蛍光強度を測定したものです。最も強い蛍光強度を与える波長が、最適励起波長です。励起スペクトルは、試料の吸収スペクトルとよく一致し(図1右上)、吸収極大波長で最も強い蛍光を生じます。吸収極大波長は、励起光を最も多く吸収するため、励起状態から基底状態に遷移する際に放出するエネルギーが大きくなるからです。蛍光スペクトルは、励起光の波長を固定して、蛍光強度を測定したものです。励起波長の違いによって、蛍光スペクトルの形状が変化することがないため(図1)、固定する励起波長は、最も強い蛍光を生じる最適励起波長を使用します。蛍光スペクトルのピークは吸収スペクトルのピークよりも長波長側にあらわれます。放出するエネルギーの一部を熱などで失うからです。
励起スペクトル、吸収スペクトル、蛍光スペクトル
図1 励起、吸収スペクトルの比較(右上)、各励起波長による蛍光スペクトル
多くの蛍光物質(ベンゼン、アントラセン及びローダミン6G)で、蛍光スペクトルと吸収スペクトルがほぼ鏡像関係になります(図2下)。これは、励起状態と基底状態における振動準位の間隔が類似しているためです(図2上)。ただし、試料と溶媒の相互作用によって、鏡像関係が成り立たなくなることもあります。
振動順位、吸収スペクトル、蛍光スペクトルの鏡像関係
図2 励起状態と基底状態における振動準位(上)、吸収、蛍光スペクトルの鏡像関係(下)

蛍光分析の特長

蛍光分析の特長は、高感度、高い選択性、溶媒等の周囲の性質が分かる、などが挙げられます。

●高感度
吸光分析が入射光の減少分を検出するのに対し、蛍光分析では発光を検出します。これは、光のない真っ暗の状態をゼロとしてそこからの増加分を検出することになり、非常に高感度です。

●高い選択性
蛍光を出す分子種は比較的限られています。さらに、蛍光波長と励起波長が一致する物質はごくわずかです。このため、蛍光分析は高い選択性を有します。測定したい分子に蛍光性の分子を結合させ、蛍光標識して使用する例も数多くあります。

●周囲の性質が分かる
蛍光スペクトルの形状や強度は、蛍光性分子の周囲(溶液のpH、温度、溶媒の種類、共存塩)から影響を受けます。これらの性質を探る手段として、蛍光分析が利用されています。

分光蛍光光度計で分かること

分光蛍光光度計では、主に以下のことが分かります。
次章では、これらを取り上げてご紹介します。
  • 蛍光の有無
  • 目的物質の有無、濃度
  • 最適励起波長、蛍光波長
  • 蛍光性分子の置かれている環境(溶液のpH、温度、溶媒の種類、共存塩)
  • 蛍光寿命、りん光寿命、蛍光とりん光の違い
  • 偏光解消(分子の動きやすさ)
  • 量子収率(発光の効率)
  • 発光色(発光の色を数値化、グラフ化)
分光蛍光光度計
図3 分光蛍光光度計
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