技術情報 Web基礎セミナー 分光蛍光光度計の基礎(3) 分光蛍光光度計の応用例
分光蛍光光度計の基礎

分光蛍光光度計の基礎(3) 分光蛍光光度計の応用例

分光蛍光光度計の応用例として、灯油や重油中のクマリンの定量測定と、蛍光シートの反射率測定の2つの事例を紹介します。

クマリンの定量測定

税金の安い灯油や重油を軽油に混ぜるといった脱税行為を防止するため、灯油やA重油には識別剤として1ppmのクマリンが添加されています。この識別剤を定量することにより、不正軽油でないことを確認する分析法が石油学会規格(JPI-5S-71-2010)で標準化されています。クマリンはアルカリ溶液中で加水分解されシス-O-ヒドロキシケイヒ酸となり、さらにこれに紫外線を照射すると異性化してトランス-O-ヒドロキシケイヒ酸に変わります(図1)。このトランス-O-ヒドロキシケイヒ酸は緑色の蛍光(Ex: 360nm、Em: 500nm)を発します。本定量法では、この蛍光を検出します。クマリン溶液の濃度0、20、40、80%に調整した試料を測定し、検量線を作成したところ相関係数0.9996となり、良い直線性を得ることができました(図2上)。得られた定量値と実際の添加物濃度の標準誤差(σ)は0.65%で、検出限界2.1%、定量下限6.5%(灯油やA重油の混合比率)の分析が行えます。
クマリンの異性化
図1 クマリンの異性化
クマリンの検量線
図2 クマリンの検量線
例として、市販の軽油4種類を検量線を用いて定量測定しました。その結果、A社: 0.18、B社: 0.24、C社: 0.50、D社: 0.45でした。定量値は全て1%未満で、検出限界の2.1%よりも小さい結果を示しており、不正添加物は含まれていないことが分かりました。

参考文献: FPアプリケーションデータ、クマリン測定システムのご紹介(110916-008)

同期スペクトルによる蛍光シートの反射率測定

蛍光性を持つ試料の反射率、あるいは透過率を分光光度計で測定すると、蛍光も同時に検出されてしまい、正味の分光分布を得ることができません。しかし、分光蛍光光度計を用いて波長差ゼロで同期スペクトルを測定すると、蛍光分が除かれて正味の透過率・反射率を求めることができます。
試料が蛍光性を持たない場合は、分光蛍光光度計で測定したスペクトルと分光光度計で測定したスペクトルは一致します。このため、分光蛍光光度計を分光光度計として活用する場合もあります。
分光蛍光光度計による蛍光を除去した測定
図3 分光蛍光光度計による蛍光を除去した測定
 分光蛍光光度計による反射率測定
図4 同期スペクトルによる反射率測定
1 2
3
4 5 6