分散型に比べたFTIRのメリットとして、以下の4点が挙げられます。
①多波長同時検出
FTIRは移動鏡を動かすだけでIRスペクトルが測定できます。分散型のように、回折格子を動かして波長をスキャンする必要が無く、高速に測定が行えます。検体数の多い測定や、積算を多くかけてノイズを減らしたい場合などに有効です。加えて、多波長を同時に測定できるため、各波長で時間的なズレが発生しないという利点もあります。時間変化に伴う試料の状態変化を観測する場合に有効です。
②スループットが高い
分散型ではスリットを用いますが、FTIRではスリットを用いず、検出器に到達するエネルギーが大きくなり、結果としてS/Nが高くなります。
③波数分解能が高い
分散型では、波数分解能の高いスペクトルを測定するにはスリットを絞る必要があります。そのため、波数分解能を上げるとS/Nが低くなり、上げられる波数分解能が限られます。 一方、FTIRでは、移動鏡の移動距離を伸ばすことで波数分解能を上げられます。隣接した波数の光を分離するためには、移動鏡の移動距離を伸ばせば、独立した波として分離できるためです。
販売開始当初は、FTIRが非常に高価だったため分散型が主流でしたが、現在ではコンピュータの価格が大きく下がり、FTIRの価格も下がったため、精度の高いFTIRが主流になっています。
④測定波数域の拡張が可能
光源、ビームスプリッター、検出器、窓板の交換により、遠赤外から可視まで測定波数域を広げることができます。分散型の装置では波数拡張するのは非常に難しく、実用的ではありません。