Q1. ラマン分光光度計は操作の難しい分析装置だと聞きますが、私でも使えますか?
最新鋭のNRS-5000/7000シリーズでは、どなたでも簡単に使用することが可能です。
操作に注意が必要だったのは、検出器に光電子増倍管を使用していた時代のラマン分光光度計です。強い光に弱い、デリケートな検出器であったため、レイリー散乱光が入らないように注意が必要でした。現在はCCD検出器を採用し、レイリー光除去フィルターでレイリー散乱光をカットしているため、全く心配ありません。さらに、グレーティングの切換や光軸調整は自動化されているため、手順に従えばどなたでも簡単に測定できます。
NRS-5000/7000シリーズは、測定の流れから測定上のアドバイスを記載したヘルプを付属しているので、PC上で確認しながら作業を行うことが可能です。さらに、試料室が自動開閉し、インターロック機構を採用、レーザーの安全基準であるクラス1に対応しており、安全性が充分に確保されています。
Q2. ラマンスペクトルの測定にはどれくらい時間がかかりますか?
通常のサンプル(測定に充分なラマン散乱強度を持つサンプル)ならば、セットして1分以内に測定できます。
本体の電源を投入後、ステージに試料をセットし、試料画像を見ながらフォーカスを合わせ、試料室の扉を閉めます。レーザースポットが小さくなるように試料のピントを合わせ、スペクトルのプレビューを確認しながら測定条件を設定し、測定を開始します。
Q3. ラマン分光測定は試料を破壊しますか?
基本的には非破壊です。ただし、小さなポイントに出力の高いレーザーを当て続けると、試料を破壊してしまうことがまれにあります。減光器を入れて試料への照射量を小さくする、測定スポットを大きくする、サンプルフローを行い同一ポイントにレーザーを当て続けないという工夫で、サンプルへのダメージを防ぐことができます。
Q4. 容器に入った試料も測定できますか?
もちろんできます。通常、液体サンプルはサンプル瓶やガラスのキャピラリーに入れて測定します。レーザーの波長に対して透明なものであれば測定可能で、ビニール袋、プラスチック容器中の試料も測れます。ただし、容器からの蛍光やラマンが同時に観察されることがあるので、影響の少ない条件で測定する必要があります。
図2は、容器内の水素ガスを測定した例です。
図2 ガスセル中の気体分子の測定
Q5. 前処理は不要と聞きますが、内部に埋もれた試料をそのまま測定できますか?
日本分光のラマン分光光度計では、共焦点光学系を採用しています。そのため、深さ方向の空間分解能が高く、ステージ操作で焦点を合わせることで内部に埋もれた試料を測定することも可能です。
図3 共焦点光学系による深さ方向の測定
Q6. レーザーを複数搭載できるメリットは何ですか?
使用するレーザーを変えることで測定を妨害する蛍光を回避することや、試料のダメージを抑えること、吸収帯に近い波長のレーザー選択し、特定のピークに対して感度を上げて測定すること(共鳴ラマン効果)などが挙げられます。
Q7. 標準以外のグレーティングが必要な場合は、どんな場合ですか?
波数分解の高い測定が必要な場合、複数のレーザーを使用する場合や、広い波数域を同時測定する場合に必要です。溝の数が少ないグレーティングほど1度に測定できる範囲は広く、溝の数が多いグレーティングほど1度に測定できる範囲は狭くなります。
Q8. ラマン分光光度計は大きな装置ですが、実験室以外の場所に持ち運んで測定することは可能ですか?
可能です。日本分光では、
多目的レーザラマン分光光度計(RMP-500 series)も販売しています。
本装置は持ち運びが可能で、測定する場所を選びません。実例として、教会に描かれた壁画の成分を非破壊で分析したことがあります。
Q9. ラマン分光光度計で、試料室に入らない大きなサイズのサンプル測定は可能ですか?
可能です。ラマン分光光度計にファイバープローブを接続することで、試料室に入らない大型のサンプルを測定できます。
Q10. マッピング測定はどんな測定に応用できますか?
薬の錠剤、電極表面、薄膜、結晶など、様々な試料に対して測定できます。一例として、錠剤全体における薬効成分の分布測定を取りあげます。NRS-5000/7000シリーズに搭載された高速イメージング(SPRIntS)と自動ステージイメージングにより、短時間で広範囲の測定(鎮痛剤の薬効成分の分布測定等)ができます。
図4 錠剤のラマンマッピング測定
Q11. IR測定では難しい低波数測定のメリットは何ですか?
低波数域のピークは格子振動(結晶中の原子の振動)や重い原子間の振動モードに帰属されます。例えば、炭酸カルシウムの結晶構造の違いや、石英とガラスの違いを確認することが可能です。
図5 石英と石英ガラスのラマンスペクトル測定