技術情報 アプリケーション トピックス 日本分光付属品紹介 顕微分光光度計 共通試料ホルダー(シェアリングホルダー)
トピックス

日本分光付属品紹介 顕微分光光度計 共通試料ホルダー(シェアリングホルダー)

概要

赤外分光法とラマン分光法は、分子の振動情報から相補的に分子構造を解析できる手法として知られています。赤外分光法は情報量が多くデータベースが充実していることから、有機物の分析を中心に広く用いられています。一方、ラマン分光法は赤外分光法に比べて空間分解能が高く、低波数領域の測定が容易なことから、無機物や結晶構造の解析に威力を発揮します。このため、双方の測定を組み合わせることで多角的な分析結果が得られることは古くから知られており、同一微小領域や同一点を双方の手法で正確かつ迅速に測定することが求められてきました。これらの要求を満たすために開発したのが、シェアリングホルダーです。

また、シェアリングホルダーを用いることで、顕微紫外可視近赤外分光光度計でも同一点測定を行うことができます。紫外可視近赤外スペクトルからは電子遷移の情報が得られるため、赤外/ラマン分光法で得られる振動遷移の情報と組みあわせることで、測定対象に関する詳細な解析が可能となります。

シェアリングホルダーで位置情報を共有

同一点を測定可能にする技術

シェアリングホルダーは、以下の2ステップで正確かつ迅速に同一微小領域や同一点を測定することができます。

  • 座標情報による測定位置への移動
  • 試料観察画像の一致度を元にした更なる測定位置合わせ込み(画像マッチング)
同じ位置に移動させる一連の操作は専用ソフトウェアにより自動で行うことができます。

同一点を測定可能にする技術

アプリケーション:繊維素材の複合分析

初めに、顕微紫外可視赤外分光光度計を用いて紫外可視スペクトルを測定しました。得られたスペクトルから繊維の色彩評価を行い、紫色の評価が得られました。紫外可視スペクトルの吸収波長から顕微ラマン測定時の共鳴ラマン測定のためのレーザー波長を選定することが可能です。今回は 570 nm 付近に吸収極大が確認されたため、波長の近い532 nm レーザーを用いてラマン測定を行うこととしました。

繊維素材の複合分析:顕微紫外可視赤外分光光度計

共鳴ラマン現象により、微量成分である染料の信号が増強されたスペクトルが取得できました。その結果、青色染料のスペクトルを取得することができ、データベースより Acid Blue 113 であることが特定できました。

繊維素材の複合分析:ラマン顕微鏡

最後に赤外顕微鏡で測定を行い、主成分である繊維の素材に由来するスペクトルを取得できました。得られたスペクトルよりナイロンであることが特定されました。

繊維素材の複合分析:赤外顕微鏡

赤外顕微鏡での測定

レーザラマン分光光度計での測定

JASCO Web Seminar『IR・ラマンの分析ノウハウを凝縮! 誰でも使えるオススメ機能 ~複合分析編~』

アプリケーション:ポリエチレンフィルムの配向評価

測定ファイル内の座標情報に加えて、回転中心座標と回転角度の情報から、試料を回転させても同一点が簡単に測定できます。この機能を用いることで、ラマン測定においてレーザーの偏光面を変えずに偏光測定ができます。装置関数の補正をする必要がないため、簡単に測定および解析することができます。( 特許第 6704156 号)

この機能を用いて、ポリエチレンの配向評価を行いました。C-C 骨格振動のピーク強度を 10° 刻みにプロットすると、0°、180° の方向の一軸に強く延伸されていることが示唆されました。

* 回転時の位置合わせ機能は、レーザラマン分光光度計のみの対応となります。

ポリエチレンフィルムの配向評価
ポリエチレンフィルムの配向評価
試料回転時の同一点測定