HPLCの基礎(3) 分離モードとグラジエント
分離の原理
HPLCでは、カラムによって成分の分離が行われます。
分離は、試料成分のカラムに対する相互作用の大きさの違いを利用して行います。相互作用の小さいものから大きいものへと溶出するわけです。相互作用には、吸着、親水性相互作用、疎水性相互作用、電気親和力、浸透・排除による作用などがあります。
図1 分離方法
カラムの種類と分離モード
カラムは、試料や目的の分析に合わせて様々なものが存在します。有機溶媒を移動相として使用し、吸着により脂溶性成分で構成される試料を分離、分析する順相カラム(主にシリカゲル)、水/メタノール系の溶媒を移動相として、疎水性相互作用を利用して様々な試料を分離する逆相カラム、細孔を利用して、試料成分を分子の大きさ順に分離するGPC用カラム、電気的親和力によって、イオン成分を分離するイオン交換カラムなど、分離モードによって様々なカラムが存在します。
表1 カラムの種類と分離モード
モード |
固定相 |
移動相 |
相互作用 |
特徴 |
順相 |
シリカゲル |
有機溶媒 |
吸着 |
脂溶性成分の分離 |
逆相 |
シリカC18(ODS) |
水/MeOH |
疎水性 |
最も良く利用される手法 |
GPC(非水系) |
ポリマー |
有機溶媒 |
ゲル浸透 |
分子量分布測定 |
GFC(水系) |
親水性ポリマー |
緩衝液 |
ゲル浸透 |
生体高分子の分離 |
イオン交換 |
イオン交換体 |
緩衝液 |
電気親和力 |
イオン性成分の分離 |
順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーの違い
順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーは、性格が全く異なります。極性の高いカラムに極性の低い溶媒を流し、極性の低い成分から極性の高い成分を溶出させる方法が順相クロマトグラフィー、極性の低いカラムに極性の高い溶媒を流し、炭素鎖の短い成分から炭素鎖の長い成分を溶出させる方法が逆相クロマトグラフィーです。最も頻繁に利用される分析手法は、逆相クロマトグラフィーです。
グラジエント溶出法
逆相クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーでは、分離の向上や測定時間の短縮を目的としてグラジエント溶出法を使うことがあります。例として、ODSカラム(Finepak SIL C18)、メタノール/1%酢酸溶液にて、クロロゲン酸とルチンを分離した例を示します。
まず、溶媒の組成比を変えずに行った分析例を見てみましょう。メタノール/1%酢酸=40/60の場合はA成分の分離がうまくできません(図2 左上)。メタノール/1%酢酸=30/70の場合では、分離はできていますが時間がかかります(図2 左下)。ここで、メタノール/1%酢酸=30/70から45/55にグラジエントをかける(濃度を変化させる)ことで、最初はカラムへの保持を強めA成分の分離を確実に行い、その後はB成分を速く溶出させることに成功しています(図2 右)。
図2 グラジエント溶出法