技術情報 Web基礎セミナー HPLCの基礎(5) クロマトグラムの定性・定量
HPLCの基礎

HPLCの基礎(5) クロマトグラムの定性・定量

定性分析

たいていの場合は標準試料における各成分の保持時間と、未知試料のクロマトグラムの保持時間を比較することで同定を行います。多くのピークが出現する複雑なクロマトグラムが得られる場合や、分析目的成分の保持時間が標準試料と実試料とで異なる場合は、未知試料に標準試料を加えることで、目的成分の同定を行います。確かな定性を行う場合は、スペクトルを取得することや、分取した成分をIR、MSなどで分析することで可能となります。
HPLC定性分析での保持時間比較
図1 保持時間を比較する同定方法

定量分析

定量には、外部標準法と内部標準法があり、どちらも検量線を用いて行います。外部標準法は、標準試料で検量線を作成し、未知試料を定量する方法です。内部標準法は、標準試料で検量線を作成する際に内部標準物質を一定量添加し、濃度比vsピーク面積比で検量線を作成し、定量を行う方法です。
内部標準物質としては、実試料中に含まれていない成分で、夾雑成分のピークと完全分離でき、定量目的成分に近い位置で溶出し、化学的、物理的に安定で高純度な成分であることが必要です。
内部標準法のメリットとしては、注入量や溶解溶媒の揮発による誤差を防ぐことができます。
HPLC内部標準法による定量
図2 内部標準法による定量

分析条件確立の手順

分析条件確立の手順を以下に、ステップごとにまとめました。

ステップ1 分析目的の明確化、分析目的成分の調査
  1. 成分の分子量、分子構造、官能基
  2. 成分の性質(溶解度、安定性、UV・蛍光スペクトル等)
  3. 試料の状態(含有量、濃度、夾雑物)
  4. データ集・文献等による分析条件、前処理の下調べ

ステップ2 分析条件の検討(カラム、移動相条件、温度、分離手法、検出方法)
  1. 比較的濃度の高い標準試料にて成分のピークの確認、分離条件の検討
  2. 測定が必要な濃度での測定、検出法の決定
  3. 未知試料の前処理の検討
  4. 未知試料における目的成分と夾雑物との分離状態の確認

ステップ3 ルーチンとして使用できる分析条件の決定)
  1. 検量線の直線性、検量線法の決定
  2. 前処理も含む定量の再現性
  3. カラムに強く保持される成分、検出器に検知されない成分の確認
  4. 他の定量方法との相関

ステップ4 ルーチン定量分析
  1. カラムの寿命
  2. ランニングコスト
  3. 測定手順の明確化(文章化)
  4. システムとカラムの保守管理
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